研究概要

令和6年度 西の原小学校 研究の概要

1 研究主題

  思いやりがあり,正しい行動ができる子の育成

   -充実した道徳授業を含めた様々な取り組みを通して-

  

2 主題設定の理由

<社会的背景・教育課題より>

  今の子どもたちが成人して社会で活躍する頃には,我が国には厳しい挑戦の時代を迎えていると考えられる。グローバル化や進展の絶え間ない技術革新等により,社会構造などは大きく,また急速に変化しており,予測が困難な時代となっている。急激に変化する社会状況の中で不登校,いじめ,少年犯罪などが,大きな社会問題となっている。相手の気持ちを想像する力の不足,自他の生命を尊重する倫理観,社会性の欠如が一因であると言われて久しい。

そのため,本校では,道徳の時間及び様々な場面において,話し合い活動や他者と共に協働的に学ぶ機会を多く取り入れ,相手の気持ちを想像する力や人間関係づくりに取り組んでいきたい。

<国や県の方針から>

  学習指導要領の道徳教育においては,自己の生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標としている。

千葉県として,家庭では家族が支えあい,学校・地域では子ども,教員,保護者,地域の人々が互いに信頼し,尊重して,思いやりのある子どもを育てる教育が必要である。と課題が出され,教育立県プラン・元気プロジェクト施策4として,道徳性を高める実践的人間教育を推進している。

 <学校教育目標から>

   本校の学校教育目標は『豊かな心をもち,自ら学び,たくましく生きる子どもの育成』である。「豊かな心をもち」とは,相手の気持ちを考える優しさや温かな心の他,物事に対して,多面的・多角的に考えられることができることだといえる。「自ら学び」とは,与えられた課題だけをこなしていくのではなく,「なぜだろう」「不思議だ」「知りたい」「解決したい」といった知的な探究心をもち,子どもが自分で考え,判断して,決めて実行する姿勢だといえる。「たくましく生きる」とは,正しいことやよいと思ったことを,失敗を恐れずに挑戦していくたくましさをもって実生活において具体的に行動に移すことや,学級や学校をよりよくしていくために,主体的に話し合い,実践していくことができる力であるといえる。

  以上のことから,思いやりの心をもち,自信をもって正しい行動ができる児童を育成することが,本校の学校教育目標を具現化することになると考える。

 <本校の児童の実態から>

本校の児童は,与えられたことに対しては,一生懸命頑張ろうとする気持ちが見られる。しかし,他者に対して,相手のことを考えて接することができなかったり,時には,傷つけてしまうことがあったりする。理由としては,自分のことに一生懸命になり,他者の気持ちまで,想像することができないこと,児童間のコミュニケーションが大人を通して行われることも多く,想像したり,体験したりする経験が少ないことがあげられる。そのことから,道徳的価値に迫る手立てを明確にした道徳教育を通して,道徳性を養い,思いやりがあり,正しい行動ができる子を育みたい。

 <これまでの研究から>

   本校は平成30年度から3年間,「自分の考えを表現する児童の育成」を主題に掲げ,国語科の研究に取り組んできた。「単元で育成を目指す力」を見本に具体的に表して提示することで,「何を」「どうすればいいか」が明確になるようにし,授業改善を図ってきた。目標とする姿が具体的に提示されるので,それを目指して表現する力が付いてきた。

   令和3・4年度は,児童自ら生き生きと意欲的に学習できるように,理科と算数を中心に学習規律を確立させ,教材・教具を工夫をすることを通して,「なぜ」「どうして」「すごい」という疑問や驚きを喚起させ,「調べたい」「やってみたい」「解決したい」という追究意欲の継続を図ってきた。始めた当初,意欲は約60%とあまり高くなかったが,2年間続けたことにより,約85%と上がってきた。しかし,まだ「どうせ自分はできない」「自分は必要とされていない」と考えている児童が多く見られる状況であった。

児童自らの意欲的な場面があまり見られなかったことから,令和5年度は道徳教育を通し,思いやりをもち,正しい行動ができる児童を目指して授業を行ってきた。その結果,善悪の判断はつくようになり,正しい行動をしたいと考える児童が増えてきた。しかし,他者の目を気にしてしまったり,自分事として捉えられなかったりして,実際に行動にうつせない児童はまだ多くいる。

上記の状況から,令和6年度は,自分事として捉えられるような児童,他者の目を気にせずに思いやりをもって正しい行動ができる児童を目指し,教材や教具を工夫し,授業改善をはかっていきたい。  

 

3 研究の視点

 視点1 

 児童の興味や関心を高めるための導入の工夫

【例】

 教材の選択,活用について

   〇アンケート等を用いて児童の実態を把握し,児童が自分事として捉えやすい題材を取り上げる。

   〇児童の興味や問題意識をもつことができるような身近な社会的課題を取り上げる。

 指導方法・教材教具の工夫について

〇話し合いによる課題の設定

   〇視覚に訴える教具の活用(DVD,場面絵,フラッシュカード,写真等)

   〇実態調査の活用(問題場面における意識調査の結果表示等)

   〇児童の作品や作文の活用,生活体験の発表 等

   〇ICTの活用(思考ツール,アプリ)

 

  視点2  

   自分の考えと友達の考えを比べ,自己理解を深める展開の工夫

  【例】

 指導方法の工夫について

   〇価値にせまるための発問の工夫

   〇価値にせまるために役割演技や劇化などを取り入れた指導の工夫

   話合いの工夫について

   〇話の仕方

   〇話の聴き方(あいのそなたさ)

   〇場面に応じた学習形態(ペア・小グループ・全体)の工夫

   〇ICTの活用(意見の集約,相違点・共通点の認識)

 

  視点3

日常生活や他教科との関連付け

   〇基本的な生活習慣の徹底

   ・挨拶運動を通して,一人一人の存在を認める。

   ・返事をしっかりとし,お互いの存在感を認め合う。

   ・相手のことを考えた言葉遣いをする。

   ・時間やきまりをまもることを通して,お互いに気持ちよく過ごす。

   ・異学年交流を行うことで,相手を思いやる気持ちを育てる。

   ・黙働を通して,誰かのために働く意識を高める。

   〇人権教育の充実

   ・いじめの未然防止・早期発見・早期解決を行う。

   ・教育相談を充実させる。

   ・ピアサポートを通して,豊かな人間関係がつくれるような場面を体感させる。

   ・人権週間への取組(ふわふわレター・人権標語 等)

 

4  評価について

    道徳の授業や様々な活動のワークシートを積み重ね,振り返りができるようにした「道徳ファイル」を作っていく。書きためた「道徳ファイル」から児童一人一人の学習状況や道徳性の成長の様子を見取る。

   ※道徳ファイルとは,ノートやワークシート,パソコンのカードなど児童の想いを綴ったもの。